Ⅵ.『Vampire’s love』 ♯16

文字数 606文字


「うん、大変ってことだけはわかった」

「あははっ、それで十分さ。いきなりアワードを出すなんて無理だけど、とりあえずボードに矢が刺さるだけでも楽しめると思うよ」

 まずはダーツとカウントアップの基本的なルール、三本ずつ投げるとか、点数が加算式だとかを教えてもらうと、次はダーツの持ち方(グリップというらしい)を教わる。

「初心者なら、スリーフィンガーだな。親指と人差し指と中指でこうやってダーツを持つんだ」

 手慣れたようにダーツをグリップする浅桜くんの手先を観察して、同じように真似てみる。「こう?」とグリップした手を浅桜くんに見せると、浅桜くんの手がまたそっとわたしの右手に伸びてきた。

「もう少し、力を抜いてみて」

 ……っ! や、やっぱり近いっ! 

 優しく触れる手と耳元でささやく声に、体温が上がっていく。

「よし。じゃあ次はスローイングだけど……」

「は、はい……」

 もはや内容が頭に入らない。スイングだかプッシュだか、とりあえず女の子はプッシュがいいけれど、投げやすいように投げればいいらしい。

「まずは俺が投げるから、同じようにして気楽に投げてみなよ」

 そう言って浅桜くんはスローラインに立つと、特に集中している様子もなく肘から上を振り子のようにくいっとなめらかに振る。次の瞬間、放たれた矢はブルの隅に突き刺さっていた。そこからさらに流れるように二本を投げると、二本目もブルの上に、そして三本目はブルの真ん中を捉えた。

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