Ⅳ. a snowy day ♯30

文字数 491文字


「大丈夫だよ。偶然通りかかった人が助けてくれたの。このバラは、さっきたまたまその人に会って貰ったんだ」

「そうだったのね。その人も緋莉も無事でよかったわ。どんな人なの?」

「ルカさんっていうハーフの人だよ。探し物のために外国から冬咲市に来てるんだって」

「ル……カ……? ラテン語で光……」

「ルカって光って意味なの?」

「ええ、素敵な名前ね」

「そうだね。あ、今まで黙っててごめんね、お母さん」

 お母さんは首を横に小さく振ると、わたしの腕を掴む手を緩めた。

「いいのよ。でも、夜は暗いとこ通っちゃだめって言ったでしょ?」

「うん……ごめんなさい」

「次からは気をつけてね。それで、助けてくれたルカさんとはどうなってるの? あんな事件が起きたあとだし、その人からも事情を聞きたいわ」

 お母さんは少しだけほっとしたように息を吐いて、再びトングを手に取り料理の盛り付けを始めた。

「それが、連絡先を聞きそびれちゃって……。銀髪で少し目が紅い男の人なんだけどね。見た目は暗い感じでちょっと怖いけど、優しい人だよ」

「え……?」

 そう伝えると、お母さんは驚いたように目を丸くし始めた。トングが床に落ちる音が響く。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み