Ⅳ. a snowy day ♯33

文字数 445文字


 お父さんのいない、いつも通りの年末。テレビ画面からは、年末特番の歌番組で盛り上がる会場が映し出されている。

 家族、か……。

 わたしにお父さんはいないけれど、寂しいと思うことはあまりない。

 お父さんの遺産のおかげで、こうしてお母さんと何不自由なく暮らすことができている。それだけで、わたしは十分恵まれているだろう。

 何気ない日々の幸せを噛み締めながら、わたしは赤いお肉を次々と口に運んだ。

 歌番組が終わると、世界中のカウントダウンの様子が流れ始めた。

 遠い異国に想いを馳せたまま、どこかで鳴っている除夜の鐘が微かに耳に届くと、わたしは今までと変わらない新年を迎えた。

「お母さん、新年おめでとう」

 どこか上の空のお母さんに伝える。

「あ……そ、そうね」

 急に声を掛けられて驚いたのか、お母さんは一瞬辺りを見渡すように首を左右にふった。

「あけましておめでとう、緋莉。今年もよろしくね」

 栗色の長い髪を揺らせながら、にこりと笑ってそう言ってくれたお母さんの口数は、いつもより少なかったように思えた。

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