Ⅸ. Lies go with the dawn of winter ♯2
文字数 563文字
「……」
言葉を発することはせず、顔に冷笑を浮かべるルカさん。本当にこの人がわたしの血を狙っているのだろうか。わたしにはどうしてもそれ以外の理由があるような気がしてならない。
「ルカ、あんたが普通じゃない事はもうわかった。それならどこへ逃げても無駄だろう。だったらせめて話し合いがしたいんだ。応じる気はあるか?」
初めて聞く優陽の強い口調。
「浅桜優陽……。その前に、君は緋莉から離れた方がいい」
ルカさんから笑みが消え、辺りを包み込む緊張感が増した。
「どういうことだ? やはりあんたは緋莉の血を狙っているのか?」
……血? わたしの血液? ううん、違う。
優陽と繋いでいた手が熱くなってきて、思わずどくんと胸が高鳴った。同時に動悸がどんどん激しくなっていく。
「優陽……だめ……」
「どうしたんだ? 緋莉」
優陽が繋いだ手に力を込める。だけど、
「わたしから……離れて」
なぜかは説明出来ない。だけど本能で理解る。ルカさんが優陽にわたしから離れろと言った理由を、朧げながら感じることが出来る。
「なに言ってるんだ。緋莉は俺のそばから離れるなよ」
強く、強く握る手。そこから微かに伝わってくる血の流れが、わたしの心を惑わせる。
「だめ。今は優しくしないで……お願い」
これ以上抑えきれない。心の奥底に閉じ込めていた感情が顔を覗かせている。