Ⅰ. in the darkness ♯3

文字数 298文字

 でももし、万が一でもわたしに彼氏が出来たら、お父さんはどう思ってくれたんだろう。

 わたしはお父さんの顔を知らない。

 わたしが生まれる前に遠い異国で亡くなったと聞かされていて、家には写真一枚残っていなかった。

 名前は(あきら)というらしい。
 日と光をくっつけて晄。

 きっと太陽が似合う眩しい人だったに違いない。そうわたしは思っている。
 ちなみにわたしの『あかり』という名前の響きは、父の名が由来だそうだ。

 お父さんが生きていて娘に彼氏ができたなんて聞いたら、心配して根掘り葉掘り訊いてくるのだろうか。

 普通なら干渉されて煩わしいのだろうけれど、父親を知らないわたしは、それを想像するとなんとなく頬が緩む。

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