Ⅴ. instinct was calling ♯15

文字数 465文字

「ちょっと緋莉! 急にどうしたのよ」

 戸惑う瑞花に申し訳ない気持ちはあるけれど、なんかもう自分がいやになる。

 意味不明な「ううん、大丈夫」や「ごめん」を何度も口にしながらモールをあとにして、駅に向かって歩き始めたそのときだった。


 キキイイイイイイッ! ガシャンッ!


 大きなブレーキ音と共に、ガラスが割れる音が辺りに響いた。

「いやあああああああっ!」

 遠くに見えたのは、悲鳴をあげて膝から崩れ落ちる女性。通りにどよめきが起こると、「救急車!」と叫ぶ誰かの声が張り詰めた空気を切り裂いた。

「うそ、もしかして事故?」

 瑞花がすぐさま音がしたほうへと駆け出していく。

「ちょっと待って、瑞花!」

 慌ててあとを追いかけるが、悪い予感しかしない。緑地公園で見た惨劇の光景が脳内で甦る。

 事故が起きたのはわたし達が居た場所から三十メートルほど先だった。ヘッドライトが割れた乗用車が歩道に乗り上げるようにして停まっていて、辺りにはガラスが散乱している。

 歩道の端には、ぐったりと天を仰ぐようにして男の子が倒れていた。膝をついた女性はおそらく母親だ。

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