Ⅶ. the sprouting love ♯23

文字数 437文字

 でもわたしの瞳が突然紅く染まる理由はそのせいなのかもしれない。そう考えると原因がわかったようで少しだけ心が軽くなる。

「先生、その、XだかYだかの染色体って、なに?」

「生物で習ってない? んーとね、例外はあるけど、簡単に言うと哺乳類の性別を決める染色体のことね。これまで男性にしか作用しなかった薬が女性にも作用するようになったってことかな」

「はあ……」

 説明を聞いても、それが今のわたしにどう関係しているのかがさっぱり見えてこない。でも余計なことを言ってお母さんが嘘をついたと思われるのも嫌だし、これ以上菊川先生に質問するのはやめておくことにした。

 それにしても、人を(あや)める夢なんて見たのは初めてだ。こんなろくでもない夢を見るなんてどうかしている。

 もしかすると朝の本城先輩とのやりとりが関係しているのだろうか。わたしの深層心理の奥では、誰かを殺したくなるほど腹が立ったということかもしれない。だとしたら、それはそれで問題だ。わたしはそんなに野蛮で猟奇的ではない……と思う。

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