Ⅶ. the sprouting love ♯25

文字数 509文字

 廊下に出ると、放課後だからか生徒の姿は少なかった。だからこそ通りがかった教室の話し声が鮮明に響いてくる。

「あの子おとなしそうなのに意外だよね。先輩に囲まれるなんてなにしたのかな?」

「先輩達、あれからずっと相手のこと化け物って言ってたよ。厨二病かっての」

「なんか、立華って子の目が紅く光ったとか言ってたよね。それに三人で押さえつけてたのに軽々と全員の腕はじいちゃったんだって。礼奈(れな)先輩の腕にも大きな痣できてたし」

「なにそれ? 目が光って怪力とか漫画じゃん。立華って子、ほんとに人間じゃなかったりして」

 知らない女子生徒達の乾いた笑い声。身に覚えがないわけではない。こうして自分以外の第三者にわたしが人を逸脱していると噂されると、ほんとうに自分が人じゃなくなってしまったみたいに思えて不安が募る。だけど、菊川先生は染色体の異常だと言っていた。お母さんは投薬も始められると言ってるみたいだし、きっと大丈夫だ。そう自分に言い聞かせる。

 でも、朝の件についてはもうこれ以上聞きたくないし、聞かれたくもない。いっそこのまま消えてしまいたいくらいだ。

 自分の存在を誰にも気づかれたくなくて、わたしは逃げるようにその場に背を向けた。

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