Ⅱ. whereabouts of blood ♯4

文字数 485文字

 お母さんに見送られ家を出ると、待ち合わせした駅前に向かって歩き始めた。

 浅桜くんとの約束は十時。今はまだ九時。駅までは徒歩ニ十五分。浅桜くんを待たせたくないからこれでいい。

 学校以外で浅桜くんと会えると思うと、それだけでうれしい。しかも今日はふたりきりだ。まだ家を出たばかりなのに、うるさいくらいに胸がどきどきしている。

 クリスマスプレゼントを入れた紙袋にちらりと目を向けると、自然と頬が緩んだ。

 会ったらまず、なんて言ったらいいんだろう。プレゼントはどのタイミングで渡そうか。喜んでもらえるかな。

 緊張からか速足になってしまい体温がどんどん上がっていく。あまり寒さは感じないけれど、これでも今日は冷え込んでいるらしい。

 しんと張り詰めるような冷たい冬の空気の中に、緑地公園からであろう新緑の匂いを嗅ぎ分けると、昨夜の一件がまた頭の中をじわじわと侵食し始めた。

 あれからどうなったか気になるし、緑地公園を通っていこうか。といっても昨日となにかが変わっているなんてことはないだろうけれど。

 でも、だからこそ、いつも通りの風景を見ておけば少しは気がらくになるかもしれない。

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