Ⅵ.『Vampire’s love』 ♯40

文字数 581文字

 おそるおそる鏡に近づいて自分の瞳を観察するが、特に変わったところはない。寝ぼけて見間違えたのかもしれない、とも思えてくる。でも、もう一度灯りを消して確かめる気にはなれなかった。

 気分を落ち着かせるためにシャワーを浴びた。お湯に打たれながら何度か鏡を見てみたが、やはり明るい場所ではわたしの瞳に変化は見られなかった。

 バスルームから出てリビングでテレビをつけると、夕方のニュースが流れていた。

「たった今入ってきたニュースです。今日の午後、また冬咲市双木町で男性の変死体が発見されました。繰り返します。本日十六時頃、首にふたつの傷跡があり倒れている男性が見つかったとのことです。これで似たような被害者は合わせて七名となりました。今のところ被害者同士の接点などは見えておらず、無差別殺人の可能性が高いとのことです」

 また、この事件か。一体犯人はなにが目的で次々に人を殺めるのだろう。

 事件は怖いけれど、今のわたしにとってそれより重要なことはわたしの瞳の変化、それに今日が冬休み最終日だということだ。

 浅桜くんへの恋心、蓮崎くんと本城さんへの疑念、お母さんの隠しごと、ルカさんの謎……。

 頭の中でパズルのピースが散らばっているような悶々とした気持ちに、自身の体調不良も重なったおかげでごっそり残っていた課題に追われると、あっという間に高校一年の冬休みは終わりを迎えた。

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