Ⅶ. the sprouting love ♯40

文字数 576文字

「でも立華の話を聞いても、やっぱりわかんないんだよな」

 なんのことだろう? ちゃんと話したつもりだけど、説明が下手だったのかな? 

 首を傾げると、浅桜くんはその疑問を口にし始める。

「あいつが立華に『苦しみから解放する』って言ったことだよ。そこまで深い接点があるわけでもないのに、どうしてたまたま出会っただけの立華に固執するんだろう?」

 それはわたしも引っかかってた。その言葉に縋りたくなった反面、苦しみからの解放とは具体的にどういうことなのだろう? なぜ見ず知らずのわたしにそこまでしてくれるのだろう? と、疑問が次々と湧いてくる。

「それに、仮にあいつが吸血鬼で本当に人を殺したとしたなら、俺達にそれを教えたことだっておかしい。どう考えても隠しておいたほうが面倒なことにならないのに」

 それもそうだ。逃げている殺人犯がわざわざ罪を自白する必要なんてあるはずがない。でもだからこそ、ルカさんは犯人じゃないと思える。

「最近起こっている事件は失血死なのに血が足りないと騒がれているけれど、未だに殺しかたが判明していない。しかも全部冬咲市で起こっていて被害者はもう十人以上だ。強引な考えかたをすれば、あいつが口にした『吸血鬼』が存在して人の血を吸っているのかもしれないし、そいつが立華を狙ってるって可能性も考えられる。でも、それでもどこか矛盾を感じるんだよな」

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