Ⅶ. the sprouting love ♯1

文字数 734文字

 三学期が始まった。

 最初のホームルームで二月末に控えた予餞会の実行委員を決めることになり、担任の先生の推薦で男子の代表を浅桜くんが務めることになった。さらに浅桜くんの推薦でわたしが女子の代表となり、毎日の幸福度がこれまでにないくらい増していて、暗闇で変化した瞳の不安も日々を重ねるごとにわたしの中で希薄になっていった。

 それでもあの日から暗い場所では鏡を見ないようにして過ごしている。病気を疑って自分なりに調べたりもしたが、結局なにも当てはまらなかった。目が痛いとか視力が落ちたというはっきりとした症状もないので、誰かに相談したり病院で診てもらったりもしていない。ルカさんの瞳も紅いのだしきっとそういう人もいるのだろうと、できるだけ楽観的に考えるようにしている。

 在校生各クラスの実行委員が集まって役割を決めた結果、わたし達はそれぞれの部活動へ協力を仰ぎ、出し物をまとめてタイムテーブルを作ることになった。

「今日の放課後から部室をまわってみようか」

「せっかくだし、卒業生と在校生の両方が楽しめる企画だといいね」

 お昼ご飯を食べながらの打ち合わせ。それを続けるうちに浅桜くんへの緊張感はどんどんなくなっていったが、同時に好きな気持ちは増し続け、わたしにルカさんという恩人がいることを浅桜くんにもきちんと打ち明けたいと思うようになっていた。

 少し気になるのは、最近になって蓮崎くんの視線を感じる時間が増えたことだ。休み時間や放課後にさりげなく目が合うと、ちくりと胸を刺すような罪悪感に見舞われる。でもその度に気づかないふりをして、心の中で『ごめんね』と密かに唱え続けた。瑞花は蓮崎くんが本城先輩と一緒にいたところを見て以来、蓮崎くんのことをあまり良く思っていないらしい。

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