Ⅳ. a snowy day ♯17

文字数 649文字

 声のほうへ顔を向けると、瑞花と皆渡くんが手を繋いで歩いてくるのが見えた。

「瑞花。それに皆渡くんも。ふたりでお買い物?」

 いつだって仲睦まじいこのふたりは、他のカップルの例に漏れることなく、入学式で顔を合わせてから付き合うまであまり時間はかからなかった。けれど、別れてしまった他の大多数と違って今でもしっかり仲がいい。

 サッカー部で活躍している皆渡くんは、チャラい見た目とその真面目さのギャップから密かに女子の人気を集めている。

 とはいえ他校の生徒にからまれていた中学の後輩を助けるために相手を殴って停学になったこともあるし、絵に描いたような優等生ではなく、その見た目も半分ほどは性格として反映されているようだ。

「ちょっとぶらぶらしてただけ。そしたら目立つふたり組が見えたから。緋莉、もしかしてその人……」

 瑞花がちらりと視線を向けた相手は、わたし達のやりとりなどまるで興味なさそうな顔のルカさん。すると、なぜか少し睨めあげるようにルカさんを見る皆渡くんが口を開いた。

「なあ、そこのあんた」

 明らかに喧嘩腰。えっ、誰? この人。

「ちょっと初対面で失礼じゃない! あの、すみません」

 すかさず瑞花が叱責する。

 おそらく皆渡くんはルカさんの銀色の髪や出で立ちを見て、あまりいい印象を抱かなかったのだろう。

 わたしだってあの時助けてもらってなければ、一生話すことのない類の人種だ。気持ちは分からなくもない。

 だけど見知らぬ歳上に向かって、いきなり「そこのあんた」だなんて、皆渡くんも相当肝が据わっている。

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