Ⅰ. in the darkness ♯1

文字数 490文字


 吐く息が白く染まり、街がイルミネーションを纏うこの季節がわたしは好きだ。

 大都市と呼ばれるには程遠いここ冬咲市も、煌びやかな光に包まれて色めき立っている。

 高校に入学して初めての冬。
 少女漫画で読んで以来ずっと憧れていたクラスのクリスマス会は、思っていたよりも楽しくて、うれしくて、あっけなかった。

 カラオケ屋さんのパーティールームに集まってみんなで歌ったりゲームしたり、わくわくした賑やかな時間はあっという間。

 カラオケ屋さんを出ると二次会に誘われたけれど、わたしは瑞花に声をかけて、その場をあとにした。

 今までのクリスマスはずっとお母さんとふたりで過ごしてきた。だけど今年は、高校生になったんだからと言って、今日のクリスマス会に快く送り出してくれた。

 本音を言えば二次会に興味はあったけれど、そんなお母さんだからこそ、イブをひとりで過ごさせたくなかった。

 心に降り積もる淋しさから目を逸らすように、プレゼント交換でもらった小さなスノードームに目を落とす。

 サンタの消しゴムや使い道のないトナカイのヘアバンドなどが周回する中、意外にもいいものが当たった。帰ったらどこに飾ろう。

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