Ⅴ. instinct was calling ♯11

文字数 827文字

 会話の区切りがついたタイミングを見計らうように、スマホの通知音が鳴った。

「あ、メッセだ。ちょっとごめん」

 瑞花に断りを入れてスマホを確認する。

『近いうちに会えないか? 話したいことがあるんだ』

 蓮崎くんだった。

「もしかして浅桜くんから?」

 弾んだ声で問いかける瑞花に、肩を落として小さく首を振る。
 蓮崎くんのことはまだ瑞花に話していない。真意も分からない彼からのメッセージには困っていたところだ。瑞花なら良いアドバイスをくれるかもしれない。

「――って感じで次々メッセがくるんだけど、これってどういうことだと思う?」

「簡単でしょ。緋莉のことが好きなんだよ」

「でも、事件の犯人を知ってるとか言うし」

「そんなの緋莉の気を引きたいだけだって。犯人なんか知ってたら普通警察に言うでしょ?」

 鈍感なわたしでも、やっぱりその考えに行き着いてしまう。

「じゃあ、どうしたらいいかな?」

「蓮崎くんかあ。大人っぽくてイケメンだけど、ちょっと悪そうだしねえ。浅桜くんが好きだからメッセしてこないでって言っちゃえば?」

「そんなこと言えないよ! それがもし浅桜くんの耳に入ったらどうするの!」

「なら適当に躱しときなよ。ていうか、それしかないって」

 まあ確かにそれしかなくて今に至るわけだけど。

 でも、話したいことってなんだろう。もしかして告白、とか? それはないよね。だって全然話したことだってないし、お互いのことなんてほとんど知らないんだから。

 それなら脅迫? そう考えると背筋が冷やっとした。でも事件に関わりがあると言っても、わたしはただ被害者達に絡まれただけで、後ろめたいことなんてなにもないし……。

 結論が出た。どちらにしても会いたくない。

「じゃあ……好きな人がいるから、ふたりで会うのは無理ですって送っとく」

「それなら当たり障りなくていいかもね」

 正直どんな内容か気になったけれど、とりあえず瑞花に言った言葉をそっくりそのまま蓮崎くんに送り、スマホをポケットに仕舞った。

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