Ⅶ. the sprouting love ♯12

文字数 198文字

 宵月家からの帰り道、オペラを抱えたわたしは緑地公園の前で足を止めた。

「……ちゃんと渡せるかな?」

 誰もいない景色に溶け込みながら、穏やかな夕暮れに浅桜くんの顔を思い浮かべた。その反対にはおぼろげな月が浮かんでいる。そこになぜか、ふとルカさんの面影が重なった。

 夕空を月が紫に染め上げていく。

 まだ薄暗い空に瞬く星を、わたしはひとりで辺りが暗くなるまで眺めていた。

 明日はいよいよバレンタインだ。

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