Ⅶ. the sprouting love ♯4

文字数 585文字

 瑞花の家は玄関にまで甘い香りが漂っていて、リビングに行くとアルパカのワッペンが施されたエプロンを着た結花さんがキッチンに立って調理をしていた。

「ただいま、おねえちゃん。今日はなに作ってるの?」

 真剣な表情でクリームを塗り重ねていた結花さんが、顔をあげてにこっと微笑んだ。

「ふたりともおかえり。もちろん明日のためのバースデーケーキよ。手間はかかるけど、お父さん毎年楽しみにしてくれてるからね」

 結花さんの言葉に、瑞花が首を傾げる。

「明日って、なにかあったっけ?」

「なに言ってるのよ。お父さんの誕生日でしょ」

「あ、そっか! すっかり忘れてた!」

 瑞花は目を丸くすると、両手を口に当てて大きな声をあげた。

「お父さんかわいそう」と言いながらくすくすと笑う結花さん。それなら今日は予定を変更して、プレゼントを探しに行くほうがいいかもしれない。

「もうすぐバレンタインだから浮かれてたんでしょ。彼氏ができた途端にお父さんの誕生日忘れちゃうだなんて、きっとお父さん悲しむよ」

 姉妹揃っての困り顔。いや、結花さんのは呆れ顔か。どっちにしても双子かなってくらい、かなり似てる。

 やっぱり親子よりもきょうだいのほうが顔は似ているのかもしれない。といっても浅桜くんとお父さんもよく似ていたけれど。

 そういえばわたしとお母さんの顔はあまり似ていない。お母さん曰く、わたしの顔はお父さん似らしい。

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