Ⅸ. Lies go with the dawn of winter ♯10
文字数 434文字
一体どうすればいいんだろう。人の命を奪ってまで、わたしは生きていたくない。
「順を追って話そう……」
ルカさんは、「だから、ふたりとも落ち着くんだ」と言って続ける。
「俺達は吸血鬼の一族だ。しかしその先祖は何代も人間と交わることによって、吸血鬼の血を薄めることに成功していた。だから協会に属する吸血鬼の中でも、人間の血が必要になるのはもうほんの僅かだ。それも吸血が必要なのは数年に一度程度だった」
ということは、わたしも数年に一度のペースで人を殺めなければならない、ということだろうか。……そんなの、嫌だ。
「吸血鬼が人間の血を欲する衝動を、吸血鬼協会ではBlood-sucking syndrome、いわゆる吸血症候群と呼んでいる。夜凛子は日本でそれを抑える薬の開発研究をしていた」
……お母さんが? じゃあ、お母さんは全部知っていたの?
「でも、お母さんは大学の教授で、生化学を……っ!」
自分で口にして気がついた。そういえば塩基配列が異なる遺伝子って、もしかして……。