Ⅳ. a snowy day ♯5

文字数 347文字

 急ぎ足で並木道を歩いて緑地公園へ差し掛かると、わたしの視線は不自然に彷徨う。ルカさんと最後に話して以来、ここを通る度にその姿を探すのが常になっているからだ。

 だけど、今日も景色はいつもと同じ。ランニングを楽しむ人や、寒空の下を元気に駆け回る子ども達。穏やかな時を刻む日常の中に、彼を見つけることはできない。

 ちくりと感じた胸の痛みを誤魔化すように、速足で歩く。

 もうここには来ないのかな? 助けてもらったのにきちんとお礼もできていない。そう思うとなんだかもどかしい。

 心の中に、今の空と同じ色をした暗い気持ちが広がっていく。それに飲み込まれないよう大きく深呼吸して、白い吐息を空へと落とす。

 涙を堪えるように下唇を噛むと、冷たい風を切る様に街への道を速足から小走りにシフトを入れ替えて駆けた。

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