第10話

文字数 897文字

 夢で私、買い物をして、嬉しすぎて財布を忘れる。
 真澄さんにとても迷惑。

 私たち、シャッターを上げた材木屋さんの中にいて、そこが私たちの家なのかもしれないけれど、とにかく財布を探しにお店に戻る。真澄さんもいっしょに来てくれる。

 途中で、小さな白いバンに追いつかれる。カップルが乗っていて、女の人のほうが、窓から手を出して小さなジップロックを振っている。あれ、私のだ。ありがとう!
 でも、そのジップロックの中には私の財布だけでなくて、私のものではないスマートフォンとハンカチも入っている。

 真澄さんが、やっぱりさっきのお店まで戻ろう、と言ってくれて、戻る。
 白いレース編みなどを売っている洋品店で、店主がミニヨンのコバヤシさん。ああこっちこっち、お嬢さま、などとふざけて私を手まねき。
 同じフロアの忘れ物コーナーに連れていってもらって、スマフォとハンカチをあずける。
 ハンカチは白くて、少し湿っている感じ。

 コバヤシさんのお店、ほかに女の人たちが何人もいて、全員、誰だかわからない。買い物に来た人と、搬入に来た人がいるらしい。
 一人の女の人が持ちこんでいるのは、盆栽。繊細な緑の枝から白い毛糸をたくさん垂らし、その先一つ一つに小さく編んだ玉をぶら下げてある。しかも、見ているうちにその白い編み玉がみんなほんのり色づいて、花開いていくのだ。
 その女の人はそんな作品をたくさん運んできていて、あちこちで感嘆の声が上がっている。

 私たちもひとしきり感嘆したあと、はじめの材木屋さんに戻る。コンクリートの土間に本などが散らばっている。私のしわざ。これじゃ眠れない。
 片づけようねと真澄さんが優しく言ってくれて、ふと彼を見ると、白いヒナギクをつないだ花冠をかぶって笑っている。リア王の真似らしい。このヒナギクもレース編み。

 床に散らばっているのは、ぶあつい本が二冊。青とオレンジ色の表紙。あとは色とりどりのプラスチックのおもちゃの、みょうに小さなのがたくさん。
 早く片づけないと夜が明けてしまうと思って、私、あせっているけれど、

 さっきからずっとさんさんと光は射して、昼間だ。

 それとも、白夜かもしれない。

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