第158話

文字数 334文字

 自分が死ぬ、という夢を、十代の頃に三度見た。はるか昔だ。
 覚えているうちに書いておこうと思う。

 一つは、知らないお寺の大きな山門をくぐっていく夢だった。
 灰白色の敷石の上を行き、小暗い堂内に入ると、読経の声がいんいんと聞こえて、影のような人がおおぜい背を見せて座っている。

 そのとき、何とはなしに、これは私の葬式なのだと気づく。
 そうか、私は死んでしまったんだ。

 右を見ると、白い布を大きく垂らして私の戒名らしきものが書かれてあり、読めない。

 御堂をそっと辞す。
 どうりで、敷石を踏んでいなかった。足がわずかに浮いて、宙を動いていくのだった。

 参道で立ち止まり、これからどこへ行こうと考える。
 悲しくはない。
 むしろ、しっかりしたお弔いをしてもらって、安心している。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み