第53話

文字数 558文字

 知らない街で、私は海賊の一味。
 海賊だってたまには(おか)に上がるだろうから、そこはいい。

 ヨーロッパの内陸の(内陸? 海賊なのに?)小さな町で、光の射す中に湾曲した通りがあり、二階建ての窓辺に花が植えられ、ゼラニウムなど。
 その一階に、みやげもの屋。
 こまごました木のおもちゃがあふれている。ほとんど店先まで。

 私たちは何か、人助けをしたらしい。こっそり勝ち誇って店内から表へ出る。
 私が、いちばん面白い、か、いちばん可愛い、か、忘れたけれど最上級をつけた「招き猫」の店、としたらどうでしょうね、と頭領(おかしら)に言っている。その「招き猫」をなぜか英語で言おうとして、ガール・キャット・ドール、か、キャット・ガール・ドール、か、で迷っている。(なんだそれ)

 おかしらはあきれ顔で私を見下ろす。
 黒くちぢれた長髪だけど、眼帯はしていない。
 
 彼のあごの下の影を見ているうちに、アーンヒェン、という単語を思いつく。似姿という意味のつもりらしい。さすがに夢の中でもすでにわけがわからない。

 招き猫はふつうの招き猫ではなくて、コレナンデ商会のナイちゃんだった。


※起きてから調べたら、「アーンヒェン」というドイツ語はありませんでした。「アーンヘリンAhnherrin」は、「近く死ぬ人のあるとき姿を現すという始祖の霊(女性)」だそうです。

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