第139話

文字数 235文字

 昨日、たまに会う友だちに、というかいつも髪を切ってくれる美容師さんなのだけど、
 気がついたら、自分の十代の頃の話をしていた。告白。

 私にとってはちょっとした地獄だったのに、その後の人生を決めてしまった十年間だったのに、
 それ、誰も覚えていないのです。
 私しか。
 公式には、違った物語になっているの。

 美容師のワタナベさんは深く同情して、それは、損よね、と言ってくれた。

 この地上に数人だけは、私が嘘つきではないと信じてくれる人たちがいる。
 そう信じて、喪服に袖を通す。

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