第150話
文字数 842文字
ひさしぶりに夢。長い長い夢の最後。
私は小学生に戻っていて、あと二人、同級生らしい女の子がいる(誰)。
そのうちの一人のお家らしい、感じよく古びた木造平屋の玄関先に、私たちは立っている。
てのひらに乗るくらい小さなシクラメンの鉢がたくさん、足もとに、家のぐるりにならべて飾ってある。
花の色はみんな白。
かわいらしい音楽が後ろで流れているので、これは何かの学習番組で、私たちは子役で、撮影のさいちゅうなのだな、とわかる。
私たち子ども三人は引き戸を開けて、お家の中へ入る。
たたきを上がると大きな一間の板の間。ここちよく薄暗い。
若くて美しいお母さん(誰)が、娘である女の子に向かって、笑いながら
「どうしたの?」
と尋ねる。
いきなりその子が、ひどくうろたえたようすで、何かサインペンのような物を床に落とし、わざとらしく知らんふりをする。
お母さんも私たちも、瞬時に気づく。
その《何かサインペンのような物》は、けっして、ここにあってはならない物なのだ。
これはいけないと思った私は、とっさにそのペン(赤ペンだった)を拾いあげ、私が落としたふりをする。
そうしてこっそりペンを見ると、テープをがちがちに巻いて「○年○組」と書いてある。
そうか、学校のをかってに持ってきちゃったんだ。だからあの子はあんなにおどおどしてるんだ。
それならこのテープをはがしちゃえばいい。
私はけんめいにテープをむきだす。なかなかきれいにむけなくて奮闘する。
努力のかいあって○年○組の部分は取れた。そうしたら、ペンに直接書かれた名前が現れた。
ゆきえ。
私は笑いだす。
なあんだ。
もともとこの「ゆきえ」ちゃんのものだったペンを、誰かがかってにクラスのものにしちゃったんだ。もともとクラスのペンじゃなかったんだ。だから、私たちが持ってきてしまっても、いいんだ。
私はほっとして笑い、つい、訊いてしまう。訊いてはいけなかった質問を口にしてしまう。
ゆきえってだれ?
起きても、わからなかった。ゆきえって誰。
私は小学生に戻っていて、あと二人、同級生らしい女の子がいる(誰)。
そのうちの一人のお家らしい、感じよく古びた木造平屋の玄関先に、私たちは立っている。
てのひらに乗るくらい小さなシクラメンの鉢がたくさん、足もとに、家のぐるりにならべて飾ってある。
花の色はみんな白。
かわいらしい音楽が後ろで流れているので、これは何かの学習番組で、私たちは子役で、撮影のさいちゅうなのだな、とわかる。
私たち子ども三人は引き戸を開けて、お家の中へ入る。
たたきを上がると大きな一間の板の間。ここちよく薄暗い。
若くて美しいお母さん(誰)が、娘である女の子に向かって、笑いながら
「どうしたの?」
と尋ねる。
いきなりその子が、ひどくうろたえたようすで、何かサインペンのような物を床に落とし、わざとらしく知らんふりをする。
お母さんも私たちも、瞬時に気づく。
その《何かサインペンのような物》は、けっして、ここにあってはならない物なのだ。
これはいけないと思った私は、とっさにそのペン(赤ペンだった)を拾いあげ、私が落としたふりをする。
そうしてこっそりペンを見ると、テープをがちがちに巻いて「○年○組」と書いてある。
そうか、学校のをかってに持ってきちゃったんだ。だからあの子はあんなにおどおどしてるんだ。
それならこのテープをはがしちゃえばいい。
私はけんめいにテープをむきだす。なかなかきれいにむけなくて奮闘する。
努力のかいあって○年○組の部分は取れた。そうしたら、ペンに直接書かれた名前が現れた。
ゆきえ。
私は笑いだす。
なあんだ。
もともとこの「ゆきえ」ちゃんのものだったペンを、誰かがかってにクラスのものにしちゃったんだ。もともとクラスのペンじゃなかったんだ。だから、私たちが持ってきてしまっても、いいんだ。
私はほっとして笑い、つい、訊いてしまう。訊いてはいけなかった質問を口にしてしまう。
ゆきえってだれ?
起きても、わからなかった。ゆきえって誰。