第20話

文字数 589文字

 ガラス張りの天井の高い、球体のような建造物の中にいて、空港の搭乗ゲートのような。
 さまざまな人が思い思いのことをしている。こちらに背を向けて座り、新聞を読んでいる長髪の男がいる。国籍はわからない。
 
 白っぽい服を着た小さな子どもたちが数人、駆けまわって遊んでいる。
 みょうに観葉植物が多い。多すぎる。温室のようだ。
 
 空腹なのだが、何かおいしいものが食べられそうな予感に浮き浮きして、そのじつ、たいていその予感が裏切られることも覚悟している。
 空港はそういう場所だ。
 
 私、子どもたちの目線まで腰を落として座り、どのお話をしてあげようか?などと言いながら人形を取り出す。これが、柔らかいパンヤを詰め赤いチェックの布を縫いつけた手作りのぬいぐるみ人形で、髪の毛だって毛糸で、二頭身だ。
 それを右手に振りつつ、ほーら、ボク、お船で帰ってきちゃったよお、などと声音をつかうと、子どもたち(三才くらいの女の子ともっと小さい男の子)、きゃっきゃと喜んでいる。

 その平凡さがかえってグロテスクだ。
 
 だって、イングランドからデンマークへ船で帰ってきたのはハムレットなのだし、ローゼンクランツとギルデンスターンはそのために死刑になる運命なのだ。(※起きて書いたメモのままです。)
 
 ぐらりと床が揺れ、灰色のカーペットの上を私たちはころがる。観葉植物たちも揺れる。
 ここが船なのかもしれない。

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