第27話
文字数 472文字
十日ぶりに夢。長い夢の一部。
闇に、といっても完璧な漆黒ではなく、藍色がかったチャコールグレーの、少し透きとおるような。
そこに、ごく細い糸に吊られて、文字がたくさん浮かんでいる。
アルファベットのパスタがほんのり発光したような、焦がす前の小麦粉の色がそのまま小粒の淡い光を放って、おびただしく宙にある。
でもアルファベットではない。ひらがなかと思って目を凝らすけれども、そうでもない。もちろん漢字ではない。数字でもない。
それでも、文字なのだ。
同じ形がいくつもある。一本の糸に一つずつ吊り下げられて、どれもかすかに揺れ、ちょっと回転しかけているものもあるけれど、まちがいなく文字で、これはたぶん私にしか読めず、私は、読めないのだけど、私が読まなければ誰にも読むことはできない。
とほうにくれて、同時にひどく高揚して、縄のれんのようにその文字たちをかき分けて歩いていきたく思うけれど、この闇は私の脳内なので、じっさいに入ることはできない。
私にできることは、ただひたすら目を凝らして、このはてしないパスタの文字列を読むことだけだ。
闇に、といっても完璧な漆黒ではなく、藍色がかったチャコールグレーの、少し透きとおるような。
そこに、ごく細い糸に吊られて、文字がたくさん浮かんでいる。
アルファベットのパスタがほんのり発光したような、焦がす前の小麦粉の色がそのまま小粒の淡い光を放って、おびただしく宙にある。
でもアルファベットではない。ひらがなかと思って目を凝らすけれども、そうでもない。もちろん漢字ではない。数字でもない。
それでも、文字なのだ。
同じ形がいくつもある。一本の糸に一つずつ吊り下げられて、どれもかすかに揺れ、ちょっと回転しかけているものもあるけれど、まちがいなく文字で、これはたぶん私にしか読めず、私は、読めないのだけど、私が読まなければ誰にも読むことはできない。
とほうにくれて、同時にひどく高揚して、縄のれんのようにその文字たちをかき分けて歩いていきたく思うけれど、この闇は私の脳内なので、じっさいに入ることはできない。
私にできることは、ただひたすら目を凝らして、このはてしないパスタの文字列を読むことだけだ。