第40話
文字数 317文字
天井の高い、白い漆喰の壁の、黒々とした梁の美しい建物にいて、
誰も着席していないローテーブルを囲むように、各自の荷物ばかりが置いてあり、
私は、誰だかわからない二人組の男に追われながら、
特定の人たちの荷物の中にある黒い肩掛けをすばやく引き抜いては、
長いのから短いのにすり替えていく。
それが私のミッションで、
これはすべてオペラの中の出来事で、
見えないオーケストラの伴奏で私も歌っている。女が男装するメゾソプラノの役らしい。
しかも悲劇らしい。
たぶん私はあの二人の追っ手をかわすことはできるのだけど、その代わりに誰かが死ぬのだ。私の兄とか恋人とか。
誰が。
わからないまま、私は、座卓のまわりを歌いながら歩いている。
誰も着席していないローテーブルを囲むように、各自の荷物ばかりが置いてあり、
私は、誰だかわからない二人組の男に追われながら、
特定の人たちの荷物の中にある黒い肩掛けをすばやく引き抜いては、
長いのから短いのにすり替えていく。
それが私のミッションで、
これはすべてオペラの中の出来事で、
見えないオーケストラの伴奏で私も歌っている。女が男装するメゾソプラノの役らしい。
しかも悲劇らしい。
たぶん私はあの二人の追っ手をかわすことはできるのだけど、その代わりに誰かが死ぬのだ。私の兄とか恋人とか。
誰が。
わからないまま、私は、座卓のまわりを歌いながら歩いている。