第71話

文字数 384文字

 長い夢のほんの一部。
 色の白い顔の、向かって左のまなじりからまぶたを回りこみ、鼻にそってあごへすらりと走る傷のある、美しい人を見ている。性別はわからない。
 アニメーションの登場人物のようにつくりものめいた顔だけれど、それでも生身だ。

 その人が、あきらめたように微笑む。

 何かを私に告げようとしたのか、それともすでに告げたのか。ともかく、ふっと笑って、ななめ後ろを見上げるようにふりむく。
 その微笑みに、たしかな見覚えがある。

 いまは背を向けて去ろうとしているその人が、
 私の知っているあの人であり、この人であり、
 私自身でもある。

 そしてなおもたしかなのは、これが何かの始まりだということだ。
 風が足もとから吹き起こり、おどろいて、私も立ち上がる。

 白いのは、その人の顔ばかりでなく、行く手に立つ白樺の木々の幹でもあるようだ。


※起きてから十六時間後に書いたメモです。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み