第75話

文字数 337文字

 もう一人、クニイさんというお友だちは、父にすばらしい桃のお菓子を贈ってくださった。(現実)

「本日口にしたスイーツがとても美味に感じ」
「これは是非ミムラさんご夫妻に(父母のこと)召し上がっていただかねばと思いお送りします」
「いっとき少しでもお楽しみいただければ幸いです」

 父、ひとくち食べて喜ぶ。
「もういいの?」と母が訊くと、いかにも平気なふりをして
「いまは、やめておく」と言った。

 主治医からは、もう、何でも好きなものを食べさせてあげなさいと言われている。

 あとで母に聞いたら、「こういうものが、世の中にあるということを、はじめて知った」と言ったそうだ。
 それから、「こういうものを、他人に贈ってくれるという人が、世の中にあるということを、はじめて知った」と言ったそうだ。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み