第16話

文字数 521文字

 田舎の小さな駅らしいところで、両親を見送る夢。
 屋根もない、コンクリートもざらざらで古い、ちっちゃな単線の駅らしいのに、なぜか停まっている列車はぱんぱんのぎゅうづめ。
 父母がぶじ乗れるか、はらはらする。
 
 乗るには乗れたけれど、あんのじょう、母の服がドアにはさまって四苦八苦している。
 それが外からみんな見えていて、
 つまりドアはない。

 その服というのが、父はともかく、母までおそろいのパジャマ。人前でパジャマはどうなんだろうと気づいてよくよく見ると、上下とも明るい色のチェック柄だけれど、上着は黄色が強く、ズボンは緑が強くて、微妙にちがうアンサンブルで、パジャマではない。
 
 とりあえずほっとして、手をふる。
 二人ともドア際に立って、ぎゅうづめながらにこにこして、手をふり返す。
 父の口が、心配しないでいいよ、と動いている。いや、口は動いていないのだけど、父の心の声が聞こえる。 
 ドアが閉まり(やっぱりドアはあった)動きだそうという瞬間、
 
 やっぱり母はあんな服持っていなかったし、父だって持っていなかったと気づく。
 だいたい母はズボンをはかない、いつもスカートだ。
 
 列車が動き出し、
 いや、動き出さない。
 そのまま、列車ごと消える。

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