第133話

文字数 388文字

 その続き。

 ピアノのレッスンを受ける夢をひさしぶりに見る。
 女の先生が(さっきのバーのマダムらしい。それにしても誰)、グランドピアノの譜面台に楽譜をぽんと置いて、弾いて、と私に言う。

 見ると練習曲だ。ハノンかなと思う。
 わざわざ本からコピーしたのをノートブックに糊で貼りつけてあって、縮尺がひどく小さくて読みにくい。

 私はどうしようもなくて、おどおどと弾きはじめる。なぜか曲の中ごろの折り返すところから弾こうとしている。
 ひさしぶりだから楽譜が読めない。やっと1小節弾いて、必死で次を読む。
 これでは曲にならない。

 先生はあきれかえった顔で、私のななめ後ろから見ている。
 考えたら、背後にいる人の顔が見えるはずはないのに、それでも見える。

 起きてからもしばらく、その一小節ははっきり頭の中で流れていた。くりかえし。
 殺伐とした練習曲ふうの。

 過呼吸ぎみにあえぎながら起きた。

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