第26話

文字数 632文字

 長い夢の一部。
 
 広場にワゴンがあって、シャンプーの試供品サイズのミニボトルが山盛りになっている。
 大きなワゴンで、シングルベッドくらいある。そこにミニボトルが山盛り。
 
 シャンプーとリンスのセットをひとつ、白地に緑のロゴ入りでナイロン袋に入ったのを手に取ると、横からすばやく
「それ、うちのでいちばん小さい」
と言われる。顔を見ても誰だかわからない。
 
 手にしたミニボトルの中身は、いつも使っている柚子の香りのシャンプーらしい。
 大きさが小旅行にちょうどよく、他のサンプルにくらべて袋のよごれも少ないので、これにしようと思うけれど、もう少し大きめのセットを見つけてしまい、つい欲が出て、迷う。
 
 ところが、私に声をかけた男は(男ではあるらしい)、他の中年カップルにも話しかけていて、
「男の人はこれでしょ」
などと自信ありげに勧めている。
 見ると、ミニボトルは空で、そこへ巨大なボトルから柚子のシャンプーを好きなだけ詰めていいのだ。

 かるく驚いてもう一度よく見ると、ワゴンに盛られたミニボトルはたいてい空のようだ。
 色とりどりの空ボトル。
 ほぼリサイクルごみの山。
 
 いつのまにかワゴンが巨大化していて、広場全体がもうワゴンの中。私はミニボトルの山を踏んで登っていくのだけど、崩れてきて歩きにくいことこの上ない。
 
 あちこちから細い煙が上がり、ここはスモーキーマウンテンらしい。
 これから毎日、私はここで空のボトルにシャンプーを詰めて生きていかなくてはならないらしい。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み