激戦4
文字数 1,100文字
何も考えないで横っ飛び。
杖が並んでいる棚に突っ込む。
ゴォォォォ!
扉の前の空間に炎の壁が立ちはだかっていた。
あ、危なかったぁ。
あのまま突っ込んでたら真っ黒焦げになるところだった……設置型の方術まで仕込んでいるとか性格悪ぅい!
くんくん……あれ、なんか変なにおいが……。
どうしよう。ただでさえザンネンなのに前髪がこんなことになって……もう許さないんだから!
私が立ち上がると、五本腕の化け物は残った足でこちらへ向かってくる。
私も負けじと気合いの声をあげ、右手のザンヤを構えた。
狭い空間、体格差、得物の数。
それらを想定しつつ戦いを展開する必要がある。
床に転がる武具が足に絡まる。
光源は転がったランタンの光だけ。
壁には影が離れたり一つになる影が映っている。
剣を振り抜いた瞬間、化け物の腕が三本まとめて吹っ飛んだ。
槍とメイスと杖も地面に転がる。
そのまま距離を詰める。
わざと盾を殴りつけて防御の姿勢を取らせてから足を斬り飛ばす。
上体を立て直そうとしているところを肩から押し込む。
さらに前へ。ひたすら前へ。
剣を閃かせて相手の動きを封じていく。
壁にまで押し込む。もう後がない。
五本の腕はすべて斬り落とされ、クモのような脚も二本しか残っていない。
巨大な目玉に私の姿が映っている。
剣に確かな手ごたえ。
視線を向けると扉に人影があった。
武具庫に現れた五本腕で八本脚の化け物はボロボロの状態で動きを止めていた。
剣を引き抜くと力なくその場に崩れ落ちる。
涙声のイーサが抱き着いてきた。
ふわふわの髪からはいい匂いがした。