声3
文字数 710文字
ゆらゆらと揺れている。
なんだかとっても気持ちがいい。
心も体もふわりふわりと浮いているみたいだ。
なんだろう?
これは……声?
私を呼んでるの?
ごめん、よく聞こえないよ。
もっと大きな声で言って。
だから聞こえないんだってば。
ねぇ、私になにか用があるの?
教えてよ。ねぇ!
声が遠くなっていく。
待ってよ! なにか伝えたいことがあるんでしょ!
聞こえないよ、聞こえないってばぁ~。
ガクンとなった。
ガタガタと揺れている。
あれ? 私、どうしてたんだっけ?
ちょっとずつ意識がはっきりしてきた。
そうだ。王都へ行くために行商に来ているおじさんの馬車に乗せてもらっているんだった。
夢の中で揺られている時は気分がよかったのに現実はいつだって過酷だ。
きっとお尻が真っ赤になってるよね。あとが残らないといいなぁ。
街道を一頭立ての馬車でのんびりと進んでいく。
お天気はとってもいい。
空はずっと高いところにあった。
お尻が痛いのはもうしばらく続きそうだ。
痛いけど我慢がまん。