剣術の師匠1
文字数 942文字
なにも言わないでこっちを見るトゥシスの目はいつもと違っている。
今までだってつっけんどんな態度ばっかりだったけど、こういう表情で見られたことはなかった。
まるで感情が感じられない。
なんだか無性に腹が立ったので、トゥシスの手を握って移動する。
たいした抵抗もせずについてくるのもムカつくんだけど。
目的の場所は他の人があまりこない、いつも日課で使っている場所だ。
腕組みをして睨みつける。
こんなのトゥシスらしくない。面白くない。なによりチームに悪影響が出かねない。
だってトゥシスは私たちのチームの参謀役なんだから。
みんなが勝つためにアイディアを出し合っているのに一人だけ聞き役に徹して。
これまでみんなをまとめてきた人がそんなんだからイーサが前面に立ってるじゃない。
参謀の指示が絶対と言っていたイーサが意見のまとめ役をしているっていうことは、参謀が機能していないってことだ。
今のトゥシスは自分の仕事をしていない。
そんなの私が言わないでもトゥシスならわかってて、すぐにでも元に戻るだろうって思ってた。
でもそんな気配がない。対抗戦まで時間もないっていうのに。
それなら私が感じていることをぶつけてやろうと思った。
でもそれをみんながいる前でやるとイーサの面子を潰すことになりかねないからこうして引っ張ってきたんだけど。
気勢がそがれる。
なんでそんな暗い顔してるのよ。
多少は使うが剣理を知らん、方術も使えん。そんな奴に負けるはずはないと思っていた。
俺のユースはガードとブロウだが剣術もやってきた。そこらのブレイドよりもやれる自信だってあった。
すぐにでも騎士になれる実力はあるつもりだった
実際、トゥシスの剣術はブレイドのエイザーン君やユウリーンさんに劣るものではない。
ユースではないのにそれだけの実力があるのは本当にすごいことなんだと学院で学んでいればわかる。