ダンジョン1
文字数 1,183文字
イーサの道場では町の外れにあるダンジョンに潜って腕を磨く訓練があったというのを私は覚えていた。
つまり助っ人を頼んだのはイーサだ。
また謎の声に呼びかけられていること、声のする方向には宝物庫があること、その宝物庫に行くには学院の地下にあるダンジョンを攻略しなければならないことを説明したら、イーサは二つ返事で引き受けてくれた。
頼りになるのは友達だよね。
その結果、私の初めてのダンジョン挑戦は、私、学院長、イーサ、トゥシスの四人パーティーで行われることになった。
ちなみに学院長はマジックとブレイドをそれぞれダブルで持っている。つまり二種類の武印を合計四つも持っているんだって。
マルチユースが珍しい上に、しかもそれをダブルで持ってるなんて。レアなユースじゃないと学院長なんていう偉い立場には立てないのかもね。
実はフォーユースのイーサなんて次の学院長最有力候補だったりして。
先頭でダンジョンに足を踏み入れたのはトゥシスだ。
イーサによるとダンジョン攻略はトゥシスが一番得意としてたんだって。
だからパーティーの安全を確保するためにもトゥシスを連れていくべきだと学院長に掛け合ってこのメンバーになった。
地面や壁をつぶさにチェックするトゥシスの背中は、すごく頼りになる男って感じだった。
左腕にはいつもの長手甲を装備している。
さらに胸や脚などの部分を覆う甲冑も身に着けていた。防御力よりも行動のしやすさを優先した構成だ。
目的地までのルートは事前に地図で確認しているので迷いなく先導をしてくれる。
ただ後ろから見ている動きは剣士や騎士っていうよりは盗賊っぽいけどね。
それを言ったら絶対に機嫌を悪くするから言わないけど。
先頭はトゥシス、私がその次。
学院長とイーサが後に続く隊列になっている。
学院長は方術具でもある鉄扇をそれぞれの手に持っていた。
基本的には方術で前衛の私たちをフォローしてくれる手筈になっている。
この鉄扇には刃が仕込まれてるから、ブレイドとしても戦えるんだって。
鉄扇は相手の視界を塞いだり、こん棒みたいに殴りつけたり、盾がわりにも使えるから何気に応用の効く武具なんだよね。
殿はダンジョン挑戦経験もあり、マルチユースで対応能力の高いイーサだ。
イーサの手には柄の部分が抜けて剣にもなる例の傘がある。
実はあの傘、方術具であり剣であり鈍器であり槍でもあるんだって。
傘一つでイーサの持つ四つのユースに対応できるオリジナルの武具なんてすごいよね。
二人の持っている武具を羨ましそうに見てたら、マルチユースは自分の能力に適したオリジナルの武具をあつらえるのが普通なんだって教えてくれた。
そういえばトゥシスの長手甲もブロウユースとしても使えるように拳の部分まで覆われていたんだっけ。