激戦2

文字数 951文字

あだっ

 背後にあった棚にぶつかる。痛いけど文句を言っている時間はない。

 手を伸ばして触れた剣を手に持つ。


 下がったところに岩に穴を穿つような鋭い槍の突きが繰り出される。

 穂先をすり抜けて前へ。

 そこに横凪ぎのメイスが襲いかかってくる。

 飛び上がってかわしつつ、手にした剣で上段から斬りつける。


 ガツンという鈍い音。

 手首に痺れが走る。


 剣の軌道に盾が差し挟まれていた。

反応いい――な!
 盾の表面を蹴って飛び退り距離を取る。
キョガガ!

 化け物が発する奇妙な音。

 うなじをチリチリとしたものが走る。

 着地した背後に灼熱の炎が生まれようとしている。

はぁっ!
 気合を込めて剣を一閃することで方術の発動をかき消した。
ふぅぅぅ……

 相手から目を離さないようにしながら大きく息を吐く。


 なんとかしのぎ切れた。

 学院に来る前の私だったら、今の攻防で3回は死んでたよね。

 少しは成長してるって思いたい。


 相手を見据えたまま視界に入るように手をあげる。

 さっきの打ち込みで嫌な感じがした剣は見事に歪んでいた。

 薄い片刃の剣で刃筋を考えないで無理やり殴りつけたらこうなるよね。

 困った。代わりの剣が欲しいけど化け物の向こう側の棚にしかない。


 飛びのくのなら方向も考慮しておくべきだった。

 扉とは反対方向、部屋の奥に逃げてるなんて……!

もう、なんだっていうのよぉ……

 泣きたい。

 なんでこんな目に私が遭わなくちゃいけないの。

 神様はもう少し私に対して優しくしてくれてもいいんじゃないですか!


 なんてブーブー愚痴をたれていたら、体の内側から話しかけてくるものに気が付いた。


 え? まさか神様!?

 もしかして今の愚痴が聞こえてました?


 違う。そうじゃない。

 そんな曖昧なものじゃなくて、もっと確固たるものが私の中にある。

 戦う術ならこの身に宿している。

 そう囁いてくるものがあった。

そっか……そうだったよね

 思わず口元がほころんだ。

 今の私は一人じゃない。

来て、ザンヤ!

 左の手のひらに握った右手を添えて、ゆっくりと両手を広げていく。

 広げきった時、右手には黒い刀身をした抜き身の剣があった。

今の私にはこの子がいるんだから!

 ザンヤにはずっと昔から知っているような安心感がある。

 この子とならどんな苦境からでも抜け出せる気がする。

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登場人物紹介

サダーシュ=シュラインベース

本作の主人公。ブレイドユースなのだが愛用の使い古しの剣でしかその実力を発揮できないでいる。ただしその剣で戦う時は誰よりも強い。


イーサティア=ニアステリア

王都で困っていたサダーシュを助けてくれた女性。サダーシュと同じく学院に所属する。

ブレイド、ブロウ、スラスト、マジックの4つのユースを持つフォーユース。

トゥシス=アズウェイ

イーサと一緒にいた美男子。サダーシュに対してどこかトゲトゲしい感じがある。

ブロウとガードのダブルを持つ。

カーモリア=アナディール

王立学院の学院長。

ニシキーン=ネオビューズ

学院でブレイドの師範をしている。

央国五剣の一人。

ケントール=フィルマウス

学院でガードの師範をしている。

男子に対して特殊な趣味を持っているもよう。

ジュリウス=リベスパーン

学院でマジックの師範をしている。

方術具の制作者としても著名。

ゴウローン=フラマウンス

学院でブロウの師範をしている。隻眼。

シンゴラス=リースバリー

学院でスラストの師範をしている。

ジンバルク=アプキャッスル

サダーシュたちの担任でありマジックユース。

方術よりも古の神秘である魔法に傾倒している。

ハージェシカ=イーツテリア

学院生徒の一人。女性だがしゃべり方がそっけない。

ブレイドとブロウのダブルユース。

ハヤード=アンウィスト

学院生徒の一人。

スラストのユースで弓を得意とする。

ケインズ=サウスマウンズ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

マジックのユース。

ゲンザール=スプラウェル

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ガードのユース。かなり年配。

シンハース=ロンストア

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブレイドのユース。

ヘイステイシア=ウィスホール

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブロウのユース。


レフターナ=フィルパディ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

スラストのユース。

汎用男性1

汎用男性2

汎用男性3

汎用女性1


汎用女性2

汎用女性3

モンスター

描写に合わせて適宜ご想像ください。

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