幻想蛇2
文字数 1,064文字
いきなりなんてこと言うのよ。
やだ、顔が赤くなってるのバレてないよね?
視線の先に馬車のシルエットらしきものが確認できる。
ロープをたどって無事に帰ってくるべき場所にたどり着けた。
ブルルとお馬さんがいなないたのは、私に「おかえり」って言ってくれたのかも。
ソウジュです。この霧に巻き込まれた人なんですけど、いっしょにいた人たちとはぐれてしまったみたいで。
あ、近くにいたスピアードッグはすべて処分しました。
だからあとは霧が晴れるのを待つだけなんですけど、こっちでなにかあったんですか?
よく見ると、おじさんの顔は真っ青だった。
ギトギトの脂汗をかいた跡が顔に残っていて、心なしかさっきよりも老けているような気もする。
おじさんが震える指で馬車の前方を指差す。
視界は10メートルぐらい先なら見える感じかな。
でもそこにはなにもなかった。
うーん、壁が動いているなんてことあり得るのかな?
恐怖で混乱してただけな気がするけど。
足元は踏み慣らされた土だ。細かい石が混ぜられていて適度に固くなっている。
これは街道を使いやすくするために央国が整備をしているからだって教えてくれたのはおじさんだ。
つまり私たちはミラージュパイソンの霧に巻き込まれてすぐに止まったので、あの街道からそう遠く離れていないはずだった。
ソウジュがかなり高い位置を指差している。
そこには大きな赤い光が二つあった。
ここが霧に巻き込まれる前と同じ場所なら近くに水辺はなかったはず。
町との距離もそこそこあるから墓場も近くにはないと思うんだけど。