剣術の師匠2
文字数 1,145文字
そんなことはないと思う。
騎士にとって剣は基本中の基本だってニシキーン先生も言っていたし。
それにイーサだって認めていた。
努力だけでフォーユースでブレイド持ちのイーサに匹敵する剣技をトゥシスは身に着けているんだって。
少し離れた場所に立って、ゆっくりと息を吐く。
前方に掲げた手にはザンヤの剣を握っている。
踏み出して突き。横凪ぎに一閃。勢いを殺さないまま振り上げて斬り下ろし。
相手の攻撃を避け、さばき、体を崩して攻撃する。
足払い。跳ぶ。間合いをとる。
その動きは学院に来た最初の夜にトゥシスが見せてくれたものだ。
あの日、我流で剣を振り回しても先はないというアドバイスを私は忘れていなかった。
だからあれからはいつもの動きの他にトゥシスがやって見せてくれた動きを真似て練習していた。
私にとって剣術の師匠はトゥシスってことになるのかな。
私はザンヤのアーツだから強くなっただけじゃない。
もちろんザンヤを手にしたことで強くなったのは間違いないけど、私という一人の剣士だって強くなっている。努力してる。
そのことをトゥシスにはわかってほしかった。
トゥシスが頭を下げるなんて珍しい。
この場面を一枚の絵画として残しておけないものだろうか。
私がなにか言うまでは頭をあげないつもりなのかな。
このまましばらく見守っているっていうのはどうだろう。
しゃがんで下からトゥシスの顔を見る。