夜の日課1

文字数 884文字

 夜遅く、私は人気のない場所へ稽古に向かう。


 風を切る音がする。

 それから地面を滑るように動く足の音。

 短く漏れる呼気。


 暗いところで立ち止まり、しばらく音だけを聞いていた。


 やがて音が止まる。

……出てきてもいいぞ
なんだ、気づいてたんだ
 剣を持って型の練習をしていたのはトゥシスだ。
精が出るじゃない。

もしかしてそっちも日課だったりするの?

だとしたらなんだ

 流れ落ちる汗をぬぐうタオルもぐっしょりと濡れている。

 いつからここで剣の稽古をしていたんだろう。

私がそうだから聞いてみただけ。学院に来た最初の日もここに来てたしね。

もしかして私の後を追いかけてきてたとか?

なんで俺がそんなことをしないといけないんだ。アホウ
いきなりアホはないでしょ、アホは!
 わざわざ息抜き相手をしてあげてるっていうのに!
お前も稽古をしに来たんだろ。

始めたらどうだ

言われなくてもやりますぅ~

 もう、かわいくないんだから!


 それから小一時間。いつもの動きを繰り返す。

 とはいえ全部我流。

 実際に自分がやってきた動きのなかでよかったところをまとめたものにすぎない。

 だから、ちゃんとした剣術を学んだトゥシスから見れば不格好に見えるのも仕方がないよね。

 そりゃケインズ君からも「バケモノじみた動き」とか言われちゃうわけだ。


 でも私にだって言いたいことはあるんだよ。

 私が相手にしてきたのは魔獣。人間とは違う生き物。

 手の数や足の数が違うこともあるし、ものすごく力が強かったり、皮膚が固かったり、毛皮が攻撃をはじいたりする。

 そういうものを相手にするには、こちらも動き方を考えないといけない。


 人間相手に戦ったことがないからそっちはよくわからないけど、魔獣相手のことならわかる。

 私の動きは正しい。

 だって今日まで私は魔獣と戦って生きてこられたんだから。

……ふぅ

 一通りの動きを終えて、大きく息を吐く。

 視線を感じる。

なによ?
いや……なんというか、本当に剣理とは異なる動きだと思ってな

それは前に聞いたわよ。

どうせ私の剣は偉い先生に教えてもらったものじゃありませんよーだ

 ばふっとタオルを顔に当てて汗をとる。
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登場人物紹介

サダーシュ=シュラインベース

本作の主人公。ブレイドユースなのだが愛用の使い古しの剣でしかその実力を発揮できないでいる。ただしその剣で戦う時は誰よりも強い。


イーサティア=ニアステリア

王都で困っていたサダーシュを助けてくれた女性。サダーシュと同じく学院に所属する。

ブレイド、ブロウ、スラスト、マジックの4つのユースを持つフォーユース。

トゥシス=アズウェイ

イーサと一緒にいた美男子。サダーシュに対してどこかトゲトゲしい感じがある。

ブロウとガードのダブルを持つ。

カーモリア=アナディール

王立学院の学院長。

ニシキーン=ネオビューズ

学院でブレイドの師範をしている。

央国五剣の一人。

ケントール=フィルマウス

学院でガードの師範をしている。

男子に対して特殊な趣味を持っているもよう。

ジュリウス=リベスパーン

学院でマジックの師範をしている。

方術具の制作者としても著名。

ゴウローン=フラマウンス

学院でブロウの師範をしている。隻眼。

シンゴラス=リースバリー

学院でスラストの師範をしている。

ジンバルク=アプキャッスル

サダーシュたちの担任でありマジックユース。

方術よりも古の神秘である魔法に傾倒している。

ハージェシカ=イーツテリア

学院生徒の一人。女性だがしゃべり方がそっけない。

ブレイドとブロウのダブルユース。

ハヤード=アンウィスト

学院生徒の一人。

スラストのユースで弓を得意とする。

ケインズ=サウスマウンズ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

マジックのユース。

ゲンザール=スプラウェル

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ガードのユース。かなり年配。

シンハース=ロンストア

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブレイドのユース。

ヘイステイシア=ウィスホール

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブロウのユース。


レフターナ=フィルパディ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

スラストのユース。

汎用男性1

汎用男性2

汎用男性3

汎用女性1


汎用女性2

汎用女性3

モンスター

描写に合わせて適宜ご想像ください。

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