アーツの実力4
文字数 1,395文字
今日の授業が終わってニシキーン先生にみんなで礼をする。
この後はケインズ君たちのチームと練習試合をする予定になっていた。
対抗戦まで練習相手をケインズ君たちが買って出てくれたのは本当にありがたい。
なんだろう。
呼ばれたので先生の所へ行く。
授業ではいつものように学院の武具――今日はパタという手にはめて使う剣での訓練だった。
当然、ちっとも使えてなかったんだけどね。
先生の腰には地味な装飾がされた剣が下げられている。
柄なんかを見る限り、かなり使い込まれているのがわかる。間違いなく私物だ。
央国五剣が使い込んでいるとっておきの剣。そういう雰囲気がこうしているだけで伝わってくる。
先生から少し距離を取る。
イーサたちに手を振って少し待っていて欲しいと伝えた。
振り返ってニシキーン先生を見る。
それだけで先生の顔がこわばる。
まだなにもしてないですよ?
右手に剣を構えた先生の声がわずかに震えている。
央国五剣の肩書を持つ達人剣の姿にはとても思えない。
踏み込みながら右手を上から下に振り抜く。
空気が断ち切れたのが見えた。
一瞬遅れてから衝撃波が走り、訓練場の地面が割れる。
二つに裂けた地面に足を突っ込みそうだったので慌てて足を着く場所を変更する。
先生は立ち会った状態で茫然としているだけだから。
まるで体中に目がついているみたいに周囲の状況が把握できていた。
すべての動きがゆっくりに感じられる。
それからドォンという大きな音が訓練場に響く。
ニシキーン先生は驚愕を顔に張り付けていた。
先生に当たらないようにしたからケガはしてないはずだけど。
アーツは体内に武具を仕舞っておけるから、得物が相手にバレないだけじゃなくて、どこからどういう攻撃をしてくるのか予測がしづらいと思うんだよね。
間合いもわかりにくいし、タイミングだって掴むのが難しい。
アーツだったと言われるイーンエーイが強いのも納得だよ。
ちょっとズルいレベルで有利だもん。
おまけに軽く振っただけでこの結果。
攻撃を受けるとか考えるまでもないんじゃないかな。
下手に衝撃刃の前に立てば真っ二つになるのは間違いないんだし。
私もわかってしまった。
アーツはとんでもない存在なんだって。