出合い3
文字数 1,145文字
私、なんでこんなところにいるんですか?
意識と肉体が繋がると、周囲を確認する余裕が生まれた。
何故か手にしていたランタンによる光が狭い部屋を薄気味悪く照らしている。
埃っぽいむせるような匂いがかすかにした。
それから鉄の匂いもする。
目を眇めて周囲を確認すると、いくつもの冷たい光があった。
それは剣であったり槍であったり盾であったり鎧であったりした。
その一つひとつの気配が語りかけてくるみたいだった。
すごく存在感がある。自己主張をしてくる。
俺を使え! 私を手にしろ! 僕が共にある!
そういった強い気配を持つ武具ばかりが集められているみたいだ。
全然、記憶にないんですけど。
え? ええ!?
たしか部屋でイーサと話をしてて、眠くなってきたから先に寝たんだよね。
私たちの部屋はどこですか?
イーサはどこですか?
さっぱりわからない。
自分がいる場所がどこなのか、どうしてここにいるのか。
誰か教えてくれる人はいませんか?
左足を引いて腰を下げる。
危機レベルを最大限に引き上げて周囲を警戒する。
なにかがいる。
この部屋に私以外に存在するものがある。
とんでもないプレッシャーが全身にのしかかってくる。
こんなの森で遭遇した魔獣相手でもそうはいなかった。
ゾワリとしたものが背筋を這い上がってきた。
久しぶりの感覚。
これは命の危機が迫っている証拠だ。
幾たびも魔獣と戦ってきて、私はこういう感覚を身に着けた。
ここにいる存在は最高にヤバい。
全力でやらないと命が危ない。
丸腰では勝てない。
得物が必要だった。
この危機を切り抜けられる絶対の力を持つ剣が。
ここへ入る時に愛用の剣は折れてしまった。
それだけは覚えている。
幸いにしてここは武具庫だから私が使える剣があるかもしれない。
私はブレイドのユース。
刃のある武具であれば自由に操ることができる……本来は。
愛用していた剣以外ではさっぱりだったけど、ここになら私が使える剣があるかもしれない。
武具は種類別にまとめられているみたいだった。
視線をあちこちに向ける。
槍や斧じゃない。
防具でもない。
今必要としているのは剣!
私が使える剣が欲しい!
視線が棚から棚へ舐めるように移動する。
ここだ。この一角は剣が並んでいる。
私の身長よりも大きな両手持ちの剣からナイフのような小型なもの。さらには湾曲した片刃の剣から長柄のハルバードまで。
多種多様な刃を持つ武具が並んでいる。
そのどれもが独特な気配をまとっていた。
離れているのに名のある存在なのだとわかる。
剣が並ぶ棚に足を向けようとした瞬間、背筋にヒヤリとしたものが走った。