トリプルとアーツ1
文字数 964文字
正中線に沿った連続突きを体軸をずらすことでかわす。
滑るような足運びで相手の右側に回り込む。
剣を突き出した態勢のまま放たれた横凪ぎの一撃は半歩下がることでかわした。
踏み込んで再びの突き。
相手の軌道に寄せるようにこちらの剣を合わせて絡める。
硬いはずの剣がまるで生き物のような滑らかな動きを見せる。
こちらの意図を悟って剣を引こうとする。
その動きに合わせて私は前へ出る。
引いた分だけ黒い剣が相手の体へと迫る。
このまま下がると押し込まれると判断したのか剣を立て、足を止めて鍔を合わせた。
至近距離で睨み合う。
キシキシという金属音が二人の間からしている。
わずかに体を沈めて下からかち上げる。
それだけで先生の上体はバランスを崩す。
何が起きたのか相手が理解する前に畳みかける。
死に体になっていた先生はあっさりと吹き飛んでいった。
でも瞬時に態勢を整え、転がりながら勢いを殺そうとしている。
地面を蹴って先生に迫る。
10メートル以上吹っ飛んだところでようやく先生が止まる。
飛び込みながら突く。
目標はしゃがんだ先生の目の前の地面。
ボッ! ボッ! ボッ!
先生がいる位置の1メートル手前から等間隔で三つの穴が開いた。
意識が一瞬だけど地面へ向かう。
今度はコントロールできない状態でゴロゴロ転がっていく。
そのまま訓練場の壁に激突して止まった。
さすがに立ち上がれないみたいだ。
誰よ、バケモノって言ったの!
見学していたケインズ君たちのうちの誰かなのは間違いない。
発言者に一言文句を言ってやろうと思ったんだけど、みんなぽかんとした顔をしている。
体に着いた砂を落としながら先生が立ち上がる。
ぱっと見た感じ、大きなケガはなさそうだけど。