アーツ3

文字数 908文字

 以前から何かに呼ばれる気がしていたこと。

 無意識のうちにザンヤという剣を手に取ったこと。

 気が付いたらここにいたこと。

 その剣は私の体内にあること。

 五本腕で八本脚の異形に襲われたこと。

 それをなんとかやっつけたこと。


 つっかえながらも全部説明した。

……冗談ではないようね
本当です。

いきなり出てきた異形には五本も腕があって……

いいえ、わたくしたちが驚いているのはそのことではないの。

サダーシュ……体から取り出せるの? 

その……剣を

うん、もちろん

 左手のひらに当てた握った右手をゆっくりと離していく。

 そこには長く黒い刀身をした両刃の剣がある。

……たしかにそれはここに保管してあったザンヤの剣です
今、どうやって取り出したんですか?
トリック……ではないようだな
やはりイーンエーイと同じだったわけだ
サダーシュ、あなた……

 みんなが一様に信じられないと言いたそうなので、何度か入れたり出したりして見せる。

 出し入れは自由自在。どこにでも仕舞えるし、どこからでも取り出せた。

 私も不思議なんだけど、痛くもなんともないんだよね。

生徒が何者かに操られ、封印を破壊して武具庫に侵入され、何者かの襲撃があり……信じられない出来事ばかりで混乱しそうです。

そうですか、貴方はアーツだったのですね

アーツってなんですか?

 ニシキーン先生は口元を笑いの形にしている。


 長い年月を経た優れた力を持つ武具は特有の魂を持っていること。

 ごく稀に武具の持つ魂の色と自分の魂の色がぴったり一致して心を重ねられる者がいること。

 その二つが出会うことによってアーツと呼ばれる存在が生まれること。


 アーツは武具を自分の体内に取り込み、自由に出し入れできるようになる。文字通り一心同体。

 つまりアーツとは『武具の体現者』であり、『生きる芸術』なのだ――。

……それが私ですか?
貴様はブレイドなのに刃を持つ武具の扱いが不得手だっただろう。

唯一使えたのは愛用していた黒い刀身の剣だけだった。そんなユースは本来存在しない

そうか、そうだったのか。やっとわかった。

折れた剣はアカツキ。ザンヤと同じ名匠メウラの手による剣だ

 珍しいことにジュリウス先生が大きな声をあげている。
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登場人物紹介

サダーシュ=シュラインベース

本作の主人公。ブレイドユースなのだが愛用の使い古しの剣でしかその実力を発揮できないでいる。ただしその剣で戦う時は誰よりも強い。


イーサティア=ニアステリア

王都で困っていたサダーシュを助けてくれた女性。サダーシュと同じく学院に所属する。

ブレイド、ブロウ、スラスト、マジックの4つのユースを持つフォーユース。

トゥシス=アズウェイ

イーサと一緒にいた美男子。サダーシュに対してどこかトゲトゲしい感じがある。

ブロウとガードのダブルを持つ。

カーモリア=アナディール

王立学院の学院長。

ニシキーン=ネオビューズ

学院でブレイドの師範をしている。

央国五剣の一人。

ケントール=フィルマウス

学院でガードの師範をしている。

男子に対して特殊な趣味を持っているもよう。

ジュリウス=リベスパーン

学院でマジックの師範をしている。

方術具の制作者としても著名。

ゴウローン=フラマウンス

学院でブロウの師範をしている。隻眼。

シンゴラス=リースバリー

学院でスラストの師範をしている。

ジンバルク=アプキャッスル

サダーシュたちの担任でありマジックユース。

方術よりも古の神秘である魔法に傾倒している。

ハージェシカ=イーツテリア

学院生徒の一人。女性だがしゃべり方がそっけない。

ブレイドとブロウのダブルユース。

ハヤード=アンウィスト

学院生徒の一人。

スラストのユースで弓を得意とする。

ケインズ=サウスマウンズ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

マジックのユース。

ゲンザール=スプラウェル

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ガードのユース。かなり年配。

シンハース=ロンストア

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブレイドのユース。

ヘイステイシア=ウィスホール

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブロウのユース。


レフターナ=フィルパディ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

スラストのユース。

汎用男性1

汎用男性2

汎用男性3

汎用女性1


汎用女性2

汎用女性3

モンスター

描写に合わせて適宜ご想像ください。

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