アーツ3
文字数 908文字
以前から何かに呼ばれる気がしていたこと。
無意識のうちにザンヤという剣を手に取ったこと。
気が付いたらここにいたこと。
その剣は私の体内にあること。
五本腕で八本脚の異形に襲われたこと。
それをなんとかやっつけたこと。
つっかえながらも全部説明した。
左手のひらに当てた握った右手をゆっくりと離していく。
そこには長く黒い刀身をした両刃の剣がある。
みんなが一様に信じられないと言いたそうなので、何度か入れたり出したりして見せる。
出し入れは自由自在。どこにでも仕舞えるし、どこからでも取り出せた。
私も不思議なんだけど、痛くもなんともないんだよね。
ニシキーン先生は口元を笑いの形にしている。
長い年月を経た優れた力を持つ武具は特有の魂を持っていること。
ごく稀に武具の持つ魂の色と自分の魂の色がぴったり一致して心を重ねられる者がいること。
その二つが出会うことによってアーツと呼ばれる存在が生まれること。
アーツは武具を自分の体内に取り込み、自由に出し入れできるようになる。文字通り一心同体。
つまりアーツとは『武具の体現者』であり、『生きる芸術』なのだ――。