あっという間にちょっとした人だかりができる。
うわー、人がいっぱいで目が回りそう……。
すぐそこに車軸を扱ってる店があるぞ。ちょっと声をかけてきてやるよ
おじさんが声をかけてくれた人に頭を下げていた。
慌てて私もいっしょに頭を下げる。
困っている人がいるとすぐに助けてくれるなんていい人なんだなぁ。
サダーシュちゃん。申し訳ないけどおじさんは馬車を直さないといけなくなっちゃったから、しばらく時間がかかりそうだ。
どうする? 直るまで一緒に待っているかい?
ここまで連れてきてもらったんだから最後までいっしょにいるべきかな。
学院はすぐそこだから先に一人で行くのならそれでも構わないよ。
招待状を見せれば大丈夫だから
ちょっと考える。
できればすぐにでも学院に行ってみたい。
ずっとどんなところだろうって気になっていた場所なんだから。
もちろん、かまわないよ。
すまないね、サダーシュちゃん。本当はおじさんがついていかないといけないのに
そんなことないです。
王都まで連れてきてもらえてすごく助かりました! ありがとうございます
荷物はそれ一つでいいのかな?
招待状は忘れてない?
着替えとかが入った大きな鞄を背負う。
腰には短めの剣を下げている。
いつもいっしょだったから、これがないと落ち着かないんだよね。
こちらこそ道中は助かったよ。ありがとう。
落ち着いたらおじさんも学院へ挨拶しに行くからね。ソウジュちゃんのような友達がたくさんできるといいね
この道をまっすぐに行って、大きな通りを右に曲がればいいからね。
その先に立派な建物があるから。そこが学院だよ
何度もお礼を言っておじさんと別れ、私は一人王都の道を歩いて王立学院へと向かうことにした。
通りの左右にはいろんなお店が並んでいて目移りしちゃう。
森でとってくればいい生活をしていた私にすると、こんな高いお金を出して果物を買うのはちょっと無理だ。
王都だといろいろと物を買う必要があってお金がかかるから無駄遣いしないようにっておじさんが言ってたもんね
お財布は首から紐をつけて下げている。
王都にはスリっていう他人のお金を黙って持っていく人がいるそうだから注意しないとね。
通りに入ると露店がいろんなものを焼いて売っていた。
さっき無駄遣いをしないって決めたばかりでしょ。
大きく口で息を吸い込んで、この通りを走り抜ける。
鼻で息をしたらおいしそうな匂いに釣られちゃうんだもん……。