刺客3
文字数 1,027文字
この音は知っているのでその場にしゃがむ。
ゴゴゴゴという不可視の刃が通り過ぎて行った。
今のは見えない風の刃を飛ばす方術だ。
でも私に同じ技は二度も通じない!
私を接近させないため立て続けに方術を発動させる。
普通なら目に見えない攻撃をかわすのは難しい。だけど来るのがわかっていて、しかもザンヤがいればなんの問題もない。
右にかわし、左へ飛ぶ。
迎撃する形で方術が発動する。
でも甘い。
私がザンヤで放つ衝撃刃は鋼だろうと切り裂くことができるんだから!
風の刃をものともせずにゴッパチの体を両断した。
壁を背にしたトゥシスは追いつめられているように見える。
でもそうじゃない。あれは作戦だ。
あの距離ならゴッパチの攻撃は剣かメイスに限定される。
それならガードダブルのトゥシスが後れを取ることはない。
杖を持った腕が上がる。
私の接近に気が付いて方術を使うつもりだ。
衝撃刃を放って手の動きを止める。
手首から先がポロリと落ちた。
方術具がなくなれば方術を使えない。
滑り込みながら八本の脚を次々に斬り飛ばす。
全部は無理。でもバランスを崩させるには数本で十分だ。
一度に複数の脚を失ってゴッパチの上体がぐらついた。
当然、剣やメイスによる攻撃も中断される。
その隙を逃さずトゥシスが前に出て突きを放つ。
上半身と下半身が繋がるあたりに放たれたトゥシスの左手はそのまま突き抜ける。まるで鋭い槍のような一撃だった。
ゴッパチは断末魔をあげながらゆっくりと崩れ落ちる。
やがて三体とも黒い砂のような状態になって消えた。
思わず顔がほころぶ。
最大のピンチも無事に切り抜けることができた。
きっとトゥシスも同じことを考えていたんだと思う。
珍しいことに笑ってた。