白い霧1
文字数 973文字
馬がいななくと馬車が止まる。
さっきよりも霧がずっと濃くなっていて、御者席から馬の姿がかすんでよく見えないくらいだった。
こういう不自然な霧には覚えがある。これはちょっとまずいかも……。
絶句してるところ悪いんだけど、早くロープを結んでください!
離れ離れになったら本当にヤバいんだからっ。
ミラージュパイソンはかなり厄介な魔獣の一つだ。
鱗の隙間から出る霧には意志があると言われている。実際にこの霧はパタパタ扇ぐ程度じゃ消えてくれないんだよね。
深い霧は絡めとった獲物の方向感覚を狂わせ、仲間が近くにいてもバラバラに引き離すという効果がある。
私とおじさんをロープで結んだのはその対策だ。少なくともロープが切られたりしない限り私たちがはぐれることはないはず。
この霧は方向感覚以外にも距離感覚まで狂わせるのが面倒なんだよね。
霧なんて気にしないぜーって進んでいったら、霧が晴れた時には何千キロも離れた場所でミラージュパイソンに食われて死んでいたって話もあるぐらいだし。
死体は丸呑みされちゃうから残らないけど、放置された荷物とかで誰かが襲われたことがわかるからね。
だからこの霧に出会ってしまったら下手に動かないでじっとしている方がいいって言われてる。
ミラージュパイソンの霧に巻き込まれたら下手に動き回らない方がいいのは知っている人も多い。
だけど実際は動き回って死んでしまう人がほとんどだった。その理由は簡単だ。