幻想蛇3

文字数 971文字

 ……あれ? また霧が濃くなってきた。


 シュルルルルルルルルル。


 狭い場所を空気が吹き抜けるような、擦過音のようなものが上の方から聞こえてくる。

ふ、ふわあぁぁぁぁぁ……
 おじさんが大口を開けて呆然としている。
ばかな……
 ソウジュも驚きながら腰から片刃の剣を抜いていた。
まさか!?

 赤い光があったところを見る。

 まだ爛々と輝いていた。

 まるで私たちを観察するように。


 シュルッ、シュルルルルルル!


 二つの赤い光の間になにか長いものが見え隠れしている。

 擦過音もそのあたりから発生しているようだった。

まさかこんなに大きいのがいるなんて……冗談にしたって笑えないわよ

 私たちを遥か頭上から見下ろしていたのは、この霧を作り出したミラージュパイソンだった。

 巨大なヘビが呼吸をするたびに、一抱えはありそうな鱗の隙間から霧が溢れ出してさらに霧が濃くなる。

ボクが戦うから二人はさがって――
 前に出ようとするソウジュの肩を掴んで止めた。
おじさん、ロープってまだあったよね? ソウジュにも結んであげて。

このままだとまたはぐれちゃうから

わかったよ
動きにくいと思うけど霧で分断されると面倒だから我慢してね

いや、ボクの方こそ考えなしで申し訳なかった。

直情径行なところは直すように言われているんだけど、なかなか上手くいかないものだね

気にしないで。

あと戦うのは私もいっしょ。二人ならなんとかなるよ

 おじさんがソウジュの体にロープを結んでくれた。
おじさんはここにいてね
わかっているよ。

必ずここに帰ってくるんだ。二人ともね

 私たちはおじさんの言葉に頷いて前へ出た。
前にミラージュパイソンを討伐したことがあるんだけど――
それはすごい。

たしか上位危険種じゃなかった?

 魔獣の危険度を表すのに使われるランクってかなり幅があるからあてにならないんだけどね。

 ミラージュパイソンは発見の難しさのせいで上位危険種になってると思うし。

その時はもっとずっと小さいヤツだったんだけどね。

鱗がとにかく硬いから注意して。お腹は比較的柔らかいけど、それでもロックタートルの皮膚並みだと思った方がいいかも

 甲羅ほどではなくてもロックタートルの皮膚も硬い。生半な剣だと弾き返されるぐらいには。


 少し距離を空けて超巨大なミラージュパイソンの前に立つ。

 赤い瞳を睨みつけるにはかなり上を向かないといけない。

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登場人物紹介

サダーシュ=シュラインベース

本作の主人公。ブレイドユースなのだが愛用の使い古しの剣でしかその実力を発揮できないでいる。ただしその剣で戦う時は誰よりも強い。


イーサティア=ニアステリア

王都で困っていたサダーシュを助けてくれた女性。サダーシュと同じく学院に所属する。

ブレイド、ブロウ、スラスト、マジックの4つのユースを持つフォーユース。

トゥシス=アズウェイ

イーサと一緒にいた美男子。サダーシュに対してどこかトゲトゲしい感じがある。

ブロウとガードのダブルを持つ。

カーモリア=アナディール

王立学院の学院長。

ニシキーン=ネオビューズ

学院でブレイドの師範をしている。

央国五剣の一人。

ケントール=フィルマウス

学院でガードの師範をしている。

男子に対して特殊な趣味を持っているもよう。

ジュリウス=リベスパーン

学院でマジックの師範をしている。

方術具の制作者としても著名。

ゴウローン=フラマウンス

学院でブロウの師範をしている。隻眼。

シンゴラス=リースバリー

学院でスラストの師範をしている。

ジンバルク=アプキャッスル

サダーシュたちの担任でありマジックユース。

方術よりも古の神秘である魔法に傾倒している。

ハージェシカ=イーツテリア

学院生徒の一人。女性だがしゃべり方がそっけない。

ブレイドとブロウのダブルユース。

ハヤード=アンウィスト

学院生徒の一人。

スラストのユースで弓を得意とする。

ケインズ=サウスマウンズ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

マジックのユース。

ゲンザール=スプラウェル

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ガードのユース。かなり年配。

シンハース=ロンストア

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブレイドのユース。

ヘイステイシア=ウィスホール

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

ブロウのユース。


レフターナ=フィルパディ

学院生徒の一人。ロウマインド流の門下生。

スラストのユース。

汎用男性1

汎用男性2

汎用男性3

汎用女性1


汎用女性2

汎用女性3

モンスター

描写に合わせて適宜ご想像ください。

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