教師陣1-1
文字数 1,094文字
白貌の麗人といった見目のジュリウスは学院でマジックの授業を任されている。言葉少ない男だが友誼に厚い。
今日も同僚のジンバルクが落ち込んでいるのを見かね、こうして酒場へ誘ったのである。
もっとも誘った本人は酒に強いわけではなく、好んで飲むことはない。事実、ジュリウスの前に置かれているグラスには果実水が入っていた。
ジュリウスとジンバルクは共に優秀な方術師だが、実践的な技量も磨いてきたジュリウスと、方術の体系に興味を持って研究をしてきたジンバルクでは王立学院における立ち位置がいささか異なる。
学院は若きユースたちの素質を磨き、伸ばしていくことを基本方針としている。
それ故、基本方術を教えるジンバルクよりもマジックユースを担当するジュリウスの方が扱いは上であった。
特にジュリウスには従軍経験がある。対軍用の大型方術の使用から後方攪乱まで、数多くの戦功をあげた。彼によって命を救われた兵士は多い。
前線の兵士たちからはスリーユースの大英雄ヒサリスの方術すら凌ぐのではないかと噂されたほどだ。
翻ってジンバルクは『魔法に魅了された』者としてつとに有名である。
幼い頃から方術に親しみ、必然のように方術の仕組みに興味を持った。
しかし研究を重ねていくうちに彼はもう一つのまったく異なる理の『魔法』という存在に行きついてしまう。それからは魔法の研究に傾倒していった。
そのため方術師としての実力はジュリウスよりも上だがマジックユースとしてはジュリウスに遠く及ばない。
ただし方術関係の研究者としては随一の知識を有する賢者なのは間違いなく、新たな方術印は常にジンバルクから生まれると言われるほどだった。