激戦3
文字数 1,054文字
シャカシャカと嫌な音をさせながら化け物が距離を詰めてきた。
この化け物は五本の腕に一本ずつ物騒な武器を握っている。
剣、槍、メイス、盾、杖。
それが混乱することなく正確に私を傷つけようと襲い掛かる。
再び化け物が奇妙な声をあげる。
同時にゴゴゴゴという大気の渦巻く音。
咄嗟にしゃがんでなかったら首と胴体がさよならをしてた。
背後にあった棚が音を立てながら崩れる。
炎に続いて風の刃を飛ばしてくるなんて!
つまりあの杖には複数の方術が組み込まれているってこと。方術は二つで終わりと思わない方がいい。
ちょっと手詰まり感が半端ない。
離れた距離では方術が、中間距離で槍が、懐に入ると剣とメイスが。そしてこちらの攻撃をきっちり防ぐ盾がある。
要するに全距離において隙がない。
対してこちらは初めて手にした剣一本のみ。
ただし深い信頼関係あり。
目を眇めて相手を睨みつける。
なんか右側の視界がおかしい。はっきり見えない。
精神に影響を及ぼす方術を受けていたらヤバい。
どういう形であれ早く決着をつけないと。
この状態で逃げに徹したらどうだろう。
あの扉から外まで逃げられる?
……うーん、難しい、かな。
これまでの動きを見ている限り、あのサイズにしてはかなり動きにキレがある。
相手の脇をすり抜けて走ったとしても方術で牽制されたら対応しないといけない。当然、足を止めることになるわけで、そうなったら槍や剣やメイスが立て続けに襲いかかってくる。
おまけに方術の手札は他にも隠しているであろうことを考えると、あまり分のいい賭けには思えない。
それならやることは一つだ。
物事はシンプルに考えた方がいい。
守ってばかりではやがてジリ貧になるのなら血路を開くのみ!
懐に入れば槍と杖は使えなくなる。
二つも選択肢が減るのだから前に出るしかない!
迎撃の槍を捌いて前へ。
一瞬で相手の懐に入り込む。
大きな的であるお腹のあたりをわざと大げさに狙う。
体の動きではかわしきれないと判断した化け物は盾で防ごうとする。
大きな盾だ。その判断は間違ってない。
姿勢を低くして盾の下に潜り込み、相手の視線から姿を隠す。
その位置に盾を構えてたら私の動きはわからないはず!
剣の切れ味にびっくりした。
抵抗なんて感じなかった。
スッと入ってスパッと抜けていた。